鳥のはなし。
「鳥好き」から「鳥に詳しい人」に至るには幾つかの段階があって、
双眼鏡と図鑑を手に一歩また一歩と階段をのぼるわたくしども。
「あ、またひとつ上にいったなあ…」と感じたのは、先日の夜明け
間もなくのことでした。
フィッフィ、フィッフィフィ。あけた窓から部屋にこぼれおちた囀り。
ん?と、ほんのわずかに頭が回転しかかります。ベニマシコだ。
いつもどおりかわいらしい歌声だ。どこにいるんだろ…どこに…
意識はすぐ暗闇のなか。
と、しばらくのちにまた、フィッフィ。
こんな住宅街にもくるんだー……沈没。
フィッフィッフィ。
…そろそろやめてもらっていいかな…。
数か月まえから店先にいついた個体がよく鳴いているので、その
声そのものとともに、「聴く→探す」というプロセスもまた脳と体
にインストールされたがゆえ、他の鳥(けっこうな種類の野鳥が
さまざまに発声しているにもかかわらず)や物音はスル―しながら、
それも半分以上ねむった状態でフィッフィだけを選びとるという
ことが起きたのだ、と結論づけました。これはもう鳥見の上達に
他ならないな、と。
このまま寝不足がつづく恐れが頭をよぎらないでもないですが、
反面、「鳥のさえずりで目を覚ますという贅沢」は簡単には手に
いれられないものです。
そんなわけで郊外の暇なカフェの従業員が綴る鳥観察日記、
ネタがきれるまで書いてみようと思います。
初回は、この夏、高来店率を叩き出しているベニマシコについて
です。あの日たまたま目にした、この鳥の、あの一瞬の行為が
この企画の火種になっています。
あくまでも「この場でのぞき観た」鳥の様子、生態を主観的に語る
ものですから、決して図鑑と見比べて「そんなことありえるかい」
と突っ込みの電話をかけたり、「あそこの店主、好きが高じて
ファンタジーの世界にいっちゃったね」と噂されませんよう、
お願いいたします。
あ、あと写真はほとんどないので悪しからず。営業中にたえず
カメラを構えているわけにはいきませんし、従業員がみた!的な
出来事はたいてい、ふっと外に目をやったたときに起きるもの
なので。
あ、何処からともなくまたフィッフィが聴こえてきました。
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