書籍の紹介『種子たちの知恵』
花の真の意義は、咲き終えたあとにあります。
植物の最終目的はタネをつくり、次世代に命をつなげること。
花は通過点に過ぎません。
美しい花びらも甘い香りや蜜も、実を結びタネをつくるための小道具に
すぎないのです。
タネがいわばマイクロカプセル。みずからの設計図である遺伝子と、
芽が育つための栄養が詰め込まれています。
新しい場所で新しい世代を担うべく、タネたちは旅立つのです。
多田多恵子さん著、『種子(タネ)たちの知恵』のまえがきからの
一節です。はっとさせられました。事実として知ってはいることの
はずなのに、なんだかつよい説得力をかんじて読みたいきもちが
ぶわっと膨らみました。
発行/NHK出版 1512円
題名どおりの内容ですので詳しい説明はしません。感想としては
世代交代をくりかえすなかで植物が必死で獲得し、じぶんのもの
にしてきた工夫、知恵のかずかずはユニークでユーモラスで驚き
と感動がとまりませんでした。そして、その巧妙なテクニックの
ひとつひとつを説き明かしたひとたちの努力と分析力にあたまが
さがるおもいです。
よく名前を知られたみぢかな植物がおおく取り上げられて
いるのも本書の特徴。店のまわりに自生する植物をみつけた
ときの嬉しさは、知人のなまえをメディアに発見したときに
にたものがあって、おもわず「おおっ」と前傾姿勢になっちゃう
こともしばしばありました。
かとおもえば
うみのむこうの珍しい植物も。なんともおもしろいかたち。
なにげなく目にして、おや?とおもうものの、そのままとおりすぎて
しまいがちな植物や、その種子、葉。そのかたちのすべてに理由
があるとしると、むきあいかたがかわってきますね。春がますます
たのしみになってきました。
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